先日、東京の二子玉川というところに行った。
東京の世田谷区にありながら、今まで余所の人たちや企業から「発見」されていなかった地域であったが、最近になってディベロッパーがタワーマンションを建設し、大手IT企業の楽天が本社を移した。
「発見」されていなかったのはちゃんとした理由もある。多摩川に近く、水害の影響を受けやすいという弱みがあるからだ。高台にあり水害とはほぼ無縁な田園調布とは大きく異なる。
さて、そんな性格を持つ二子玉川は、子育て世代が多いという特徴がある。最近になって開発された武蔵小杉と似ている。
子育て世代が多いということは、子どもを持つ人が多いということになる。先日行ったときも、これを強く実感させることがあった。
私が二子玉川周辺の橋(二子橋)を渡って川崎市方面へ行こうとしたら、向こうからベビーカーを押しながら談笑している20代~30代くらいの女性3人組がやってきた。
私の前にはおばあさんも橋を歩いていたのだが、彼女たちは私とおばあさんには一切目もくれず、ひたすらベビーカーを押して前に進み続けた。
橋の歩道というのはそれほど広くはないので、ベビーカーが2,3台並んだら相当のスペースを取られてしまう。
だから、私とおばあさんは半ば強制的にベビーカーに道を譲らざるを得なかったのだ。
このような「一切道を譲ろうとしない人」は、意外と若い女性に多い。特に、二子玉川や武蔵小杉のような、いわゆる「イケてる街」とされる地域に多い。
私は彼女たちに対して呆れたものの、怒りは感じなかった。
むしろ、「これこそが彼女たちなりの生存戦略なんだろう」と思った。
道をどける、どけないというのは、一種の「勝負」のようなものである。自分が退くか、相手がするか。
自分が道を譲るより、相手に譲らせる。それも、合法的で常識的な範囲の行動によって譲らせる。
そうするには、「自信」を体全体で表現するのが一番なのだ。
「私って、年収1000万の旦那がいて、あのタワマンの35階に住んでるのよ!」と言いたげな風体で、堂々と歩く。ただそれだけだ。
そうするだけで、自信がない人や、弱い人は簡単に道を譲る。もはや性別や年齢など関係ない。
おそらく二子玉川の彼女たちは、そんな「自信」をみなぎらせていたからこそ、二子玉川に住めるような「成功者」になれたのではないだろうか。
他者を蹴落とすことで、「成功」は生まれる。成功者というのは、無意識に他者を蹴落とすことができる、いや、自らの「自信」によって他者を土俵から追い出すことができる人たちが多いのだろうと思った。