総務省の発表によれば、東京23区で初めて転出超過となったようだ。
首都東京の中枢と言われる23区で、人口が転出超過になったのは大きな意味がある。
新聞などでは、「昨今のコロナ禍でリモートワークが普及したことにより、都心から郊外に移り住む人が増えた」と説明されることが多いが、私は他にも理由があるのではないかと思う。
それは、人々の間で経済格差が拡大しているために、東京都心に住めなくなった人が続出しているのではないかということだ。
ご存知の通り、東京都心は日本でも屈指の家賃の高い地域だ。もとから住居を持つ東京出身者でなければ、自分で住む場所を手配しなければならず、高額の家賃を負担することになる。
数十年前のように、「一億総中流」が根付いていた頃の日本であれば、安アパート→賃貸マンション→一戸建てというように、年齢が上がるにつれて住む場所を変え、やがて東京に定着していくという「住宅すごろく」のような人生を送ることができた。
しかし今は違う。初めが安アパートであるのは同じだが、いつまでたっても安アパート暮らしが続く。マンションや一戸建てへとシフトすることはない。
それは何故か、理由は至極単純である。格差が拡大して、いくら働いても給料が上がらない状態が続いているからである。
給料が上がらないのであれば、高額なローンを使ってマンションや一戸建てを購入する余裕などあるわけがない。日々の生活を維持するだけで精一杯であるから、安アパートから抜け出すことができないのだ。
安アパートというのは、お世辞にも住環境の良いところではない。他の地方であれば、同じ家賃でもっとクオリティの高い住宅に住むことができるだろう。
ならば、東京都心に住み続ける理由などない。東京の郊外に出るか、思い切って関東地方から出て、別の地域へ行くか、ということになる。
かくして、東京都心の人口は減少しているのだと私は思う。